[場面指導]
先日、休み時間に児童生徒がけがをしたので、すぐに保健室で養護教諭に手当をしてもらいました。幸い軽傷だったので、ほっとしましたが、もしこれが大きなけがだったら…と、想像したら急に不安になってきました。児童生徒がけがをしたときの処置はどのようにしたらよいでしょうか。

学習コーチより

(1) 学校における救急処置
学校における救急処置とは、学校の管理下で発生した疾病に対して、救命・悪化防止・苦痛の軽減を目的とした一時的な処置を行うことです。具体的には、大出血・呼吸停止・意識障害・ショック症状などのような場合に、医療機関に委ねるまでの「救命措置」と、医療機関へ行く必要のない程度の疾病に対する「応急手当」のことで、医療行為を行うことではありません。例えば、同一疾病に対する継続的な処置は、救急処置の範囲を超えるものです。
また、救急処置を必要とした疾病についての情報を収集して分析し、保健指導等で再発を予防する教育的な意義もあります。

(2) 緊急連絡体制の周知
突発的な傷病発生に際して、適切かつ冷静な対応が行えるよう、各学校では緊急連絡体制が整えられています。
まず、日頃から自校の危機管理マニュアルや校内緊急連絡体制について把握し、全ての教職員が共通の認識をもつことが大切です。

(3) 救急処置の順序
救急処置は次のような順序で進めますが、それぞれの段階で児童生徒に保健指導を行っていくことも大切です。

ア 主訴の聴き取り/状況把握
事故が起きたときには、慌てず落ち着いて対応します。本人が傷病を訴えてきたときは本人から主訴を聞き、本人でなく通報者が来たときにはその報告内容から傷病の程度を判断します。

イ 観察
以下のことを速やかによく観察します。
・ 現場周辺に危険がないか
・ 意識の有無
・ 呼吸の有無
・ 脈拍の有無
・ 出血の有無
・ 顔色
・ その他(けいれん、四肢の麻痺や運動障害、激痛など)

ウ 処置
負傷した児童生徒を保健室に搬送することが困難な場合は、養護教諭に連絡し、事故現場での対応を協力して行います。その際、教師は負傷している児童生徒のところから離れないで、周囲への協力を求め(周囲の職員に応援を求めたり、他の児童生徒を連絡に行かせたりします。)、ためらわずその場でできる処置を行います。状況によっては、AEDを準備し、心肺蘇生を実施します。
また、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を処方されている児童生徒には、呼吸器症状等アナフィラキシーショック症状がみられる場合には、エピペン®をすみやかに使用しましょう。エピペン®使用後は、使用したエピペン®を持って直ちに医療機関を受診させましょう。養護教諭の在・不在に関わらず、傷病発生時は、その場にいる者が最善の処置を行わなくてはなりません。「救命の連鎖」(予防・早期認識と通報・一次救命処置・二次救命処置と心拍再開後の集中治療)を理解し、傷病者に対処する必要があります。

エ 事後措置
・ 記録(事故発生の状況、処置・対応の状況の事実及び時系列の整理)
・ 報告、連絡(校長・教頭・学年主任・保健主事などの関係者へ)
・ 手続き(事故報告、(独)日本スポーツ振興センターへの手続きなど)
・ 職員への報告(同様の事故発生を防ぎ、対処方法を他の職員が知るためにも、事故発生状況、処置の状況等について)

(4) 留意すること
ア 養護教諭が不在のとき、負傷の処置や医療機関への移送の判断に迷うとき、首や頭部のけがの場合は、専門医へ受診するようにします。(後で急変することもあるため。)また、軽微なけがであっても、観察を継続すること、状況によっては専門医の受診を勧めます。

イ 自分が処置・対応している間に二次災害が起きないよう、他の教職員に協力を求めましょう。他の児童生徒に動揺を与えないように、事故現場から遠ざけるなど配慮することも大切です。

ウ 医療機関に搬送するときは、保護者に連絡し(養護教諭が対応している場合は養護教諭と連携して)、具体的に状況を伝えます。保護者に過度の不安を与えないように気を付けます。事故の発生状況についても保護者に連絡します。その際は、事実について十分把握しておくことが重要です。その後も保護者との連絡を密に取り、信頼関係を保つよう心掛けます。保護者への連絡は、電話だけでなく、時には直接出向いて伝えることも必要です。保護者の心情に配慮し、誠意をもって対応しましょう。
なお、軽微なけがの場合でも、けがをした状況や処置について保護者に連絡しておくほうがよいでしょう。
保護者への対応については、学年主任や校長、教頭、関係者等に相談しながら行いましょう。

エ 危険な場所や壊れた遊具・用具などがないか、常に点検を行い、整備にも気を配ることが必要です。それとともに、児童生徒には用具の安全な使い方や危険などについて指導します。

オ 自分自身がいざという時に適切な処置や対応ができるよう、救急法の研修等で必要な知識や技術を身に付けておくことも重要です。